居抜き物件コラム
最低賃金1195円で飲食店経営はどう変わる
閉店・退店
2026.09.6
最低賃金1,195円時代、飲食店の利益はどう変わる? 愛知県の最低賃金が引き上げられ、2026年10月1日から時給1,195円となります。 これまでの1,140…
愛知県の最低賃金が引き上げられ、2026年10月1日から時給1,195円となります。
これまでの1,140円から55円の引き上げです。
「55円なら、それほど大きな影響ではないのでは?」
そう感じる飲食店経営者の方もいるかもしれません。
しかし、店舗経営では売上全体ではなく、最終的に残る「利益」に対して考える必要があります。
人件費が数%上昇しただけでも、利益が10%、20%、場合によってはそれ以上減少する可能性があります。
今回は、名古屋・愛知で飲食店を経営する場合を想定し、最低賃金1,195円時代に店舗経営がどう変わるのかを考えてみます。
愛知県の最低賃金は、
2026年9月30日まで:1,140円
2026年10月1日から:1,195円
となり、55円引き上げられます。
上昇率では約4.8%です。
問題は、この55円が1時間だけ発生する費用ではないことです。
例えば、アルバイト・パートの総労働時間が月1,500時間ある店舗なら、
55円 × 1,500時間 = 82,500円
単純計算で毎月82,500円、年間では99万円の人件費増となります。
例えば、30坪程度の居酒屋を想定してみます。
月商500万円
食材原価165万円
人件費150万円
家賃40万円
水道光熱費30万円
その他経費65万円
この場合、営業利益は50万円です。
ここに最低賃金上昇による月82,500円の負担増が加わったとします。
営業利益は、
50万円 → 約41万7,500円
まで減少します。
最低賃金の上昇率は約4.8%ですが、50万円あった利益は約16.5%減少する計算です。
これが店舗経営における人件費上昇の怖さです。
さらに考えておかなければならない問題があります。
最低賃金が1,195円になったとき、
「アルバイト募集 時給1,200円」
では、最低賃金との差はわずか5円です。
法律上は問題なくても、採用競争では十分とは限りません。
人材確保のために時給1,250円、1,300円と設定する店舗が増えれば、実際の人件費上昇は最低賃金の55円だけでは済まなくなります。
例えば、現在1,140円のスタッフを1,250円に引き上げれば、差額は110円です。
月1,500時間なら、
110円 × 1,500時間 = 165,000円
年間では198万円の増加です。
先ほどの月商500万円、営業利益50万円の店舗なら、単純計算では営業利益が約33万5,000円まで減少します。
利益率10%だった店舗が約6.7%まで低下することになります。
もう一つ忘れてはいけないのが、既存スタッフとの賃金バランスです。
例えば新人アルバイトを1,250円にした場合、
長年勤務しているスタッフが1,250円
時間帯責任者が1,300円
という状態では、
「新人とほとんど給料が変わらない」
という問題が起こります。
その結果、
新人アルバイト
↓
ベテランアルバイト
↓
責任者
↓
店長
↓
正社員
と、店舗全体の賃金を見直さなければならなくなる可能性があります。
つまり最低賃金の引き上げは、「最低賃金で働いている人だけの問題」とは限りません。
ここからは店舗物件を扱ってきたプロスパープロジェクトとして考えてみます。
これまで店舗探しでは、
駅から近い
人通りが多い
家賃が安い
駐車場がある
居抜きで初期投資を抑えられる
といった条件が重視されてきました。
もちろん、これらは今後も重要です。
しかし人件費が上昇する時代には、もう一つ、
「この店舗を何人で回せるのか」
という視点が重要になると考えています。
例えば同じ売上が期待できる2つの店舗があったとします。
A物件は家賃30万円、人件費160万円。
B物件は家賃40万円、人件費135万円。
B物件の方が家賃は10万円高くても、家賃と人件費を合わせれば、
A物件:190万円
B物件:175万円
となります。
つまり、家賃だけを見ればA物件の方が安いのに、店舗全体のコストではB物件の方が15万円安いことになります。
「家賃が安い物件=儲かる物件」とは限らない。
人件費が上昇するほど、この考え方は重要になってくるでしょう。
現在の飲食店経営では、人件費だけが上昇しているわけではありません。
食材価格、光熱費、家賃など、さまざまなコストが上昇しています。
そこへ最低賃金の引き上げが加わります。
ここで注意したいのは、
「赤字になったから閉店する」とは限らない
ということです。
例えば以前は月50万円の利益が残っていた店舗が、
50万円
↓
30万円
↓
15万円
となったとします。
数字上は黒字です。
しかし、オーナー自身が毎日長時間働き、さまざまな経営リスクを背負ったうえで月15万円しか残らないのであれば、
「このまま店を続ける意味があるのだろうか」
と考えるのは自然なことです。
閉店とは、必ずしも経営に失敗した結果ではありません。
条件が変われば、続ける・業態を変える・移転する・第三者へ店舗を引き継ぐなど、経営判断そのものを見直す必要があります。
人件費が上がれば、
「メニュー価格を上げればいい」
という考え方もあります。
もちろん値上げも一つの方法です。
しかし、値上げによって客数が減れば、思ったように利益が改善しない可能性もあります。
だからこそ、
・価格を見直す
・営業時間を見直す
・メニュー数を絞る
・セルフオーダーなどを導入する
・少人数で運営できる店舗へ変える
・より適した物件へ移転する
など、店舗全体を見直す必要があります。
重要なのは、単純に「売上を増やす」ことだけではありません。
同じ売上を、より少ない人数とコストで作れる店舗にする。
これからの飲食店経営では、この考え方がますます重要になるのではないでしょうか。
私たちは長年、名古屋・愛知を中心に、岐阜・三重・浜松など東海エリアで店舗物件や居抜き店舗に関わってきました。
その中で感じるのは、店舗経営には必ず「判断する時」があるということです。
続ける。
値上げする。
省人化する。
業態を変える。
移転する。
そして場合によっては、店舗を第三者へ引き継ぐ。
どれか一つが常に正解なのではありません。
大切なのは、数字を見ずに「もう少し頑張れば何とかなる」と続けることではなく、現在の環境に合わせて判断することです。
最低賃金1,195円への引き上げも、その判断材料の一つです。
人件費が上がること自体を店舗側が止めることはできません。
原材料価格や光熱費についても同じです。
経営者ができるのは、変化した条件の中で最適な方法を考えることです。
「あと何年この店を続けるのか」
「現在の利益で経営を続ける意味があるのか」
「今の店舗は人件費を含めて効率的なのか」
一度数字にして考えてみることをおすすめします。
そして、もし「閉店も選択肢かもしれない」と考え始めた場合でも、すぐに店舗を解体して返却する必要があるとは限りません。
厨房設備や内装を残した居抜きの状態で、次の出店者へ店舗を引き継げる可能性があります。
プロスパープロジェクトでは、名古屋・愛知を中心に岐阜・三重・浜松などで、店舗物件の仲介だけでなく、居抜き店舗の売却・譲渡についてもご相談を受けています。
「まだ閉店すると決めたわけではない」
という段階でも構いません。
まず現在の店舗にどのような選択肢があるのかを知ったうえで、続けるのか、売却するのかを判断してください。
閉店・退店をお考えの方は、閉店を考えられている方向けのご案内もあわせてご覧ください。
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